2017/11/07 住宅新報
マンション開発のアスコットはこのほど、東京都渋谷区に建設した長屋形式の賃貸住宅「FARE代々木上原」で、17年度グッドデザイン賞を受賞した。四方を建物に囲まれた旗竿敷地ながら、階高や開口部の位置を工夫することで開放感のある居住空間をつくり出した点が評価された。
同物件は、京王井の頭線の「駒場東大前」駅から徒歩11分の住宅地に立地する。地上3階建てで、1階がロフト付き(20㎡、5戸)、2階と3階が内階段でつながるメゾネットタイプ(32㎡、5戸)で全10戸の単身向け賃貸住宅。共用の廊下や階段を持たない長屋形式のため、1階には全住戸の玄関ドアが並ぶ。
敷地(141㎡)は間口が狭く奥に広がった形状。こうした敷地は都心の住宅地では珍しくないが、周りを建物に囲まれるため、窓などの開口部を設置しても隣接建物からの目線が気になり、居住者はカーテンなどで閉め切ってしまうケースが多いという。
「閉鎖的になりがちな空間をいかに魅力付けするかが課題だった」(企画を担当した前田朋広・企画開発部長)。 そこで、通常2.5メートルの室内の天井高を1階は3.7メートル、2階は2.4メートル、3階は3.0メートルとし、開放感を確保。床から天井までの大きな窓も設けた。また、デザイン面では、内外装ともに色は白で統一。明るくすっきりとした印象の建物とした。
「都心への通勤も便利な上、おしゃれなカフェなどの飲食店が立ち並ぶ人気のあるエリア。住まいにもデザイン性を求める人が多いと考えた」(前田部長)。相場よりも1、2割程高い賃料だが、昨年10月の完成以降、稼働率100%が続いているという。
「FARE」は同社が2年ほど前からスタートした単身者向け賃貸マンションシリーズ。1棟当たり6~15戸程度の中小型タイプだ。同社が土地を仕入れて建物を建設し、収益物件として投資家に販売する。同社は99年の創業以来、分譲マンションを主力事業としているが、都心の地価高騰に伴い、まとまった土地を仕入れるのは難しいのが現状。そこで、比較的手に入りやすい小ぶりの敷地を活用し、デザイン性の高いコンパクト賃貸マンションをシリーズ化することにした。これまでに、十数棟を供給済みだ。