株式会社アスコット

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Architect HAMAR'S eye

鴨長明の方丈庵

京都の下鴨神社に河合神社という場所があります。美人祈願でも有名なこの神社には、鴨長明の方丈の庵があります。
この方丈の庵は、資料によると、鴨長明が50歳ころから58歳ころまで各地を移転いている間に「庵」として仕上げたものだそうです。間口奥行きとも各一丈なので、「方丈」の名前が付いているそうです。

ひまわり

現物を見て驚きました。1丈は約3mですので、約3mx約3mの建物です。それが移動できるようになっているのです。大八車に乗せて移動していたのでしょうか?
建物そのものは大きくはないものの、かといって木造住宅ですから、それなりの重さがあり、気楽にあちこち引っ越しするのも大変だったのではないかと思います。同じ移動式住居のモンゴルのパオのような簡易さはありませんでした。引っ越しの際には、ある程度の人が集まり、ガラガラと大八車を押しながら移動したのではないかと想像できます。

絵画

この移動式の庵で、あちこちに移り住みながら方丈記を出筆し、「ゆく河の流れは絶えずして」、という文を生み出したと思うと、「ゆく河」とは概念的なものとばかり思っていましたが、実態をも伴なっていたのではないかと感じました。もちろん随筆ですから、実際の体験に基づいているのでしょうが、約3mx約3mの住まいを見たことで、あらためて歴史上の人物である鴨長明と方丈記の「ゆく河」が、身近に感じたのです。

鴨長明の時代は、大火や飢饉なども多く、自然の前の無力さを感じることで、より無常観が大きくなり方丈記を書いたのだとは思います。現代の私たちの暮らしは、もちろん大自然の前では無力ですが、とはいえ、けっして無常観が支配している世界ではありません。私たちは家を飾ることで、未来に対する力を得たり、前向きな考えになったり愛情を感じたりと、家から生きる活力を得ることが出来ます。鴨長明は、約3mx3mと狭い方丈庵に花などを飾っていたのでしょうか。方丈記には、無常観だけではなく愛情の素晴らしさも書かれていますので、きっと方丈庵にも愛情を感じる飾りがあったのだと思っています。

HAMAR'S PROFILE

1968年生まれ 建築家都内の古民家を自ら設計しリノベーションして暮らす。
海外生活歴4年間。
日本の繊細なデザインと海外の大胆なデザインの両方を併せ持つ建物企画を得意とする。

Design Reports ミラノサローネ